№102. システム開発、日本語でどうぞ!


今回はタイトルがかなりベタだが、2018年度開始直前のタイミング(3月21日)であり、新しくマレーシアに赴任された方も多いと思うので、宣伝も兼ねて我社(日本のCSSも含め)がどんな感じの会社で、どんな風に仕事に取り組んでいるのかを書いてみたいと思う。そもそも、当サイトは会社のウエッブページでありながら、業務内容はアリバイ程度の情報のみで、あとは「アジア暮らし秘話」などと称して、代表者が好き勝手なことを書いてるだけである。とてもじゃないが、このサイトをみて「仕事を依頼したい」などといった連絡がくるなんて期待もしていなかったし、現にあまりその手の問い合わせはなかった。現在の我社の顧客の殆どは、同業者からの紹介以外は、アポをとって訪問し、お話をさせて頂いてから数年後に声を掛けて頂くような、非常に気の長い営業の末にお付き合いが始まった会社ばかりだ。大切な日々の業務を効率化するばかりでなく、企業の財産であるデータをどう生かしていくか、決して小さくない額のIT投資から、最大限の成果を期待する企業に相対するための営業活動というものは、地道にコツコツとやっていくしかないと信じて疑わなかったからだ。


ところが今年の初め、外出中にスマホをチェックすると、当地に古くから進出している大手企業から「貴社のホームページを拝見しました。現在、システム開発をお願いできる企業を探しているところです・・・」とのメールが入っていた。ザックリと書かれた要件は「ウチに出さないで、どこに出す?」というくらい我社にとって経験のある内容であった。取り急ぎスマホから返信し、翌日、詳細なメールを送り、後日面会することになった。初面談当日、背景や経緯、システム要件等々、そして、取引の必須条件を聞くと「こちらの要件説明は全て日本語でやりたい」とのはなしであった。日本では日本語の出来るSEなど、なんの付加価値もないが、マレーシアではかなりの希少価値があるので、その条件にウチのサイトがヒットしたということであった。日本人顧客から日本語でシステム要件をインタビューし、それを、比較的原価の安いローカルスタッフに分かるカタチで設計書に落とし込み、彼らにプログラムを作成させ、システムとして納品する。当地に来てから、かれこれ、20年近く日本相手のオフショア開発としてコレをやっているので、当たり前過ぎて「自社の強み」をすっかり失念していたのだった。こりゃ、あらためて、もう少し丁寧に売り込まにゃならぬ、というワケだ。扱う技術や構築実績などは会社情報を参照願いたいが、そこに書かれていないようなことを、ちょっと、正直ベースで宣伝してみよう。


我社の仕事は「業務システム(ソフトウェア)の構築」である。潔いくらいにこれだけだ。「あれも出来ます、これも出来ます、全部出来ます、トータルソリューションカンパニーです!」などとは絶対言わない(言えない)。他社のパッケージをかついで販売することもなく、特定のハードウェアベンダーのプログラムのみを作成しているワケでもない。基本的にはコンピュータメーカーや特定の製品とはベッタリにならないようにしている。その方が自由な立場での提案、およびハードやツールの選択が可能であり、結果的にお客様の選択肢を広げることにも繋がるからだ。そして、私(前川)個人の信条でもあるのだが、組織やモノなどの「縛り」がなるべく小さな会社(存在)でありたいと思っているからでもある。「縛り」が少ない分自由ではあるが、反面、安定的にバックの大組織から支援を受けられるような身分でもない。企業として余剰人員などの贅肉を溜め込む余裕も無いので、必然的に筋肉質(小規模)である。現在全7名と少ないローカルスタッフだが、マレーシアの会社には珍しく、勤続19年目を筆頭にして、直近4年間は退職者を一人も出していない。継続性を求められる企業システム構築や保守作業を受注するにおいて、スタッフが安定しているということは、掛け替えのない強みだと自負している。


お客様とは長い付き合いになる場合が多い。中には「構築以降システムはずっと安定稼働しているので保守は不要だ」と、嬉しいような悲しいような理由で関係が切れてしまった企業もあるが、殆どの場合は、改善や拡張の依頼で関係は継続する。長いケースでは27年間(末娘が生まれた年なので憶えやすい)もお付き合い頂いている日本のお客様もある。その間、先方の社名が変わったり、合併があったり、様々な紆余曲折がありながらも、こちら側はひたすら「継続は力」を実践しているカタチだ。あまり「継続」や「長い」を売り文句にすると、年寄りがいつまでも現役で出張って、若い世代が育っていないんじゃないかと危惧されてしまうが、実態は、日本、マレーシアとも40歳代前半の者が実務を仕切っているのでご安心あれ。


一般的に、IT業界の変化は激しく、そのスピードは「ドッグイヤー」などと言われる。バッチ処理がオンラインになり、インターネットが世界を席巻し、ウエッブがモバイルアプリになる。今では、子供ですら往年のスーパーコンピューター並みスペックのマシンを持ち歩いている。しかし、扱う技術や方法論は違っても、我社の仕事のコアの部分の「業務システム」は、極端に変化しているワケではない。汎用コンピュータ向けプログラマ派遣の会社が、バブル崩壊やオープン化の波で市場から退場し、ガラケーソフトの大手が、スマホに乗り遅れて苦戦を強いられているような情報を聞くたびに、「ウチの仕事は、変化の激しいIT業界に属していると言って良いのだろうか?」と、不思議な気持ちにさせられるほどコアの部分は変化に乏しい。我社の業務にとって、本当の意味でインパクトのあった「変化」は、個人的には、汎用機&専用端末からPC前提の構成になったときと、WWW技術が一般化したときの二回だけだったと思う。日系のネット企業が「先端技術」をウリにしてマレーシアに進出して来ているが、技術という方法論を使って「どんなエンドユーザの要望を実現するか?」の視点に欠けていると、レストランのポイントアプリとか、洗濯屋さんのオンライン予約のような、結果的に使われないサイトが増えるだけだ。GoogleやFacebookのような、人々の生活を一変させてしまうような「発明」を出来る人達は別として、我々は、まずは「要望」ありき。お客様のご要望を、その時々の「最良」(「最新」ではない)と思われる技術を使って実現する。これが我社の業務実態であり、ある意味限界でもある。


前述のように、お客様のご要望が第一と考えるが、それは、新しい技術を軽視していると言うことではまったくない。スタッフの中には「新し物好き」も居るので、新技術を使った試作プログラムを作ったり、実業務として、大規模商業サイトの構築、銀行の音声回答システム、自動精算機のソフト等々、以前に経験のないものでも、チャンスがあれば果敢にチャレンジするようにしている。新しい課題が来たら本を買い込み、ネットで調べ、トライアンドエラーを繰り返す。最初は辛いが、こういうプロセスも楽しみ、結果を出す喜びが、次のプロジェクトへの自信に繋がってきたことは事実だ。


日本語での要件定義、継続的なお付き合い、ご要望と技術の兼ね合い、どれも全て重要だが、一番大切なことは、やはり、お客様や仕事に対する「誠意」だと私は思っている。別の言い方をすれば「責任感」とでも言おうか。 ただしかし、これだけは、お付き合いが始まらないと、感じ取って取って頂けることは、かなり難しい。。。


さて、長い宣伝は野暮だし、「語るに落ちる」などといった厳しい言葉も頭にチラつくので、今回はこの辺でやめておこう。 仕事の依頼は言うに及ばず、我社に興味がお有りの方は是非ともメールでコンタクトしてくだされ。 システム開発という業務を通じて、様々な人達の仕事を教えて頂き、皆様と知り合いになれ、中には友人が出来る場合も稀ではない。実は、私はこの仕事が大好きなんです。


(№102. システム開発、日本語でどうぞ! おわり)


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