たまに「今度FaceBookでお友達申請していいですか?」とか「Twitterでつぶやいてたりします?」と、初対面で意気投合した人などに問われることがある。 「ああ、そういうの、やってないんですよ」と素っ気なく答えると、特に若い人などからは「ああ、この人はもう新しいものには、ついていけない年配者なんだな」と速攻見限られるおそれがある。 なので最近は「自分はIT分野の人間なので、SNS(Social Networking Service)はセキュリティ面で信用できないから、立場上やれないですよね〜」と、斜にかまえた答えを返すことにしている。 まあ、どう屁理屈をこねたところで、見限られるときは見限られるので、無駄な抵抗かもしれないが、FaceBookのアカウントを持ってないだけで、デジタルデバイドなオッサンとランク付けされるのは癪に触る。 まして、Googleの検索に引っかからない会社がこの世に存在してないと思われように、FaceBookで繋がれない人は、友達の候補者ですらない扱いを言外に受けるのは困ったものだ。
何ごとにも良い面と悪い面があるが、このSNS、歴史が浅い割には爆発的に世界中に広まってしまったため、未だ人類が生産的に使いこなせていない状態だと私は思っている。 SNSなんて単なるツール(道具)なんだから、必要に応じて利用すれば良いのだが、そこには落とし穴や地雷が沢山埋まっているのだ。 仕事中や友達との会話中でも気になる「中毒」、他人の情報を判断基準とする「依存」、虚勢や誤解からの「炎上」等々。 個人的には、今後も現在のようなカタチで、SNSが使われ続けていくことを非常に怖く思っている。 遠く離れ離れの家族や、昔の友人と、時々近況を知らせあっているような場合は良いが、寝ているとき以外は常にスマホやPCが気になるようだと、アナタはもうヤバイ。 ある意味、喫煙やパチンコと同じで「合法だが度を過ぎるとかなり危険な存在」これが便利で楽しいSNSの負の側面だ。 ある時期から有名人のFaceBookやTwitterを「やめる宣言」などが出て来だしたが「最初から、こんなことになると、なぜ想像出来なかったのかな?」と不思議でたまらない。 私は、BlogやSNSが一般的になる前からWebで細々と情報発信しているが、その「疲れ」が、自分をFaceBookやTwitterに走らせなかったことも認識している。 引退世代が、世間とのつながりを保つための道具としては、とても有効だと思うが、何かと時間の足りない現役世代が、テレビをダラダラと観るように、貴重な時間を浪費してしまうのは、国力さえも低下させてしまうのではないだろうか。。。 いや、なにもメディア社会論を書こうなんて、大それたことを言ってるワケではない。端的に言えば「私がFaceBookやTwitterをやらぬ理由集」これが今回のコラムのテーマである。
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【友達申請を断るなんて】
FaceBookで双方向に繋がるには、繋がりたい相手に友達申請をし、それを相手が承認する必要がある。
実は、このプロセスが私にはとても怖い。
リアルの世界では、通常「私と友達になってくださいますか?」、「はい、是非とも!」などと言った会話はせず、ウマが合う人であれば自然と親しくなり、イケ好かない奴であれば、仮にそいつが自分を好意的に思っていたとしても、意識的に遠ざかっていれば良いだけの話だ。
間違っても「あなたは私を友達として受け入れるか否か?」などと問われることはまずない。
しかし、これがSNSの世界だと、[Yes]か[No]か[放置]の三択を迫られるワケだ。
まあ、ここで言う[放置]は、私が被承認者側だとすれば、心情的に殆ど拒絶に等しい扱いなので、実質、[Yes]か[No]かの二択だ。
首尾良く相手から承認を得ることが出来れば良いが、拒絶などされた日には傷つくこと必至。
私だったら、以後その相手とは、顔を合わせるだけでも苦痛となってしまうだろう。
「自分が傷つくことは他の人だって同じ筈だ」と考える私はナイーブ過ぎるのか、この点をFaceBookをやっている人に問うと「そんなの気にせず、放っておけば良いんだよ」と答える。
「そういう世界なのよ」と言われれば、「そうですか。。。」と答えるしかないが、学校でのイジメや、職場の同僚間での逆恨みなどに発展しなければよいが、と個人的にはヒヤヒヤものなのだ。
【意外とマメな性格なので。。。】
4ヶ月間もこのコラムの更新をサボっている人間が言うのもなんだが、私は55歳にしては、かなりレスポンスの速い男だ。
運転中、打ち合わせ中、睡眠中以外に受診した仕事メールは、ほぼ即レスを心がけているし、依頼された調査などを翌日に持ち越すのは、とても気持ち悪く感じるタイプなのだ。
こんな性格なので、もし仮に、自分の発信したネタに対して、24時間365日無制限、且つ、簡単に反応がつくような仕組みがあったら、その対応だけで神経をすり減らすことになるだろう。
単純なに「いいね」とクリックしてくれただけの人に対しても、感謝のコメントを入れたいし、悪意のあるメッセージなど見つけたら、血相を変えて反撃ぜずには居られない。
たまに要領の良い人などは、情報収集用のアカウントだけ持って、ROMに徹する人もいるようだが、「前川さんはROMだからね」などと言われれるのも嫌だし、面白そうな話題を前に黙って居られるとも思えない。
流石に重症の「いいね症候群」にまでは落ちないと思いたいが、SNS初心者同様、自分のネタに対する反応に喜び(反応がないことに落ち込み)、その対応のために常にスマホを頻繁に意識してしまうような、半中毒生活に突入する確率はかなり高いのである。
【炎上必至】
前述のような自分の心の弱さが理由でFaceBookやTwitterを遠ざけている一方で、自分の迂闊さが周りに毒や害を与えてしまうことを恐れている自分も居る。
近しい人達に言わせれば、私はかなり毒舌な方らしい、毒舌をマイルドな表現にすれば「忌憚のない意見」と言い換えても良いかも知れない。
事実、おべんちゃらを言うのは好きではないし、毒にも薬にもならぬ会話はしたくないので、時に内角ギリギリの球も投げる。そして、厄介なことに人並み以上の感情の起伏もあったりする。
こんなタイプの者が、口で喋るように、瞬間的に発信出来るツールに親しめば、本来意図するところと異なる部分ですら「炎上」する可能性が高くなってしまう。
SNSが一般的ではなかった頃は、自身のWebページからBBS(Bulletin Board System:電子掲示板)サービスを呼び出して意見交換の場にしているサイトも多かった。
そんな頃でも、匿名性を悪用して誹謗中傷したり、感情的な書き込みでサイトが炎上したりすることは珍しいことではなかった。
このコラムを始めた2000年頃、複数の友人達から「サイトにBBSもつけたほうが良い」と勧められたが、私は今現在と同じ理由でそれをしなかった。
スタンスは「何か意見があれば、自らを名のったうえでメールしてくれば良いだけで、匿名の書き込みでしか発言できない姑息な輩とは会話する価値も意味も無い」である。
幸いSNSは匿名ではないが、「発言、意見、対話は慎重に推敲してから発信しあう」というプロセスをショートカットしてしまうのであれば、どんなサイトでも「炎上」の火種は燻っていると思ったほうが無難だ。
ネット上の罵詈雑言の応酬ほど人間の醜さを見せつけられるものはない。
相手の分かっているSNSでは尚更である。
【リア充 VS ネガティブ系】
自撮り写真など一緒に「さりげなく」を装いアップされているが、「俺って凄いだろ?」、「私の生活、羨ましくない?」といった薄っぺらい思惑が見え隠れする投稿が、所謂「リア充アピール」と言われているヤツだ。
これ、もの凄く、気持ちはわかる。
他者が見て「イラッ!」とする可能性のあるネタでも、ついついやってしまいそうだ。
友人達から「ハイハイ、またやってるのね、わかった、わかった」程度で、優しくスルーしてもらえればよいが、度が過ぎたり、エラそうに書いた「にわか知識」がばれたりして、
「アンタって単なる”ええかっこしい”だけじゃなくて、薄っぺらい”知ったかぶり”なのね」などと思われてしまったら、まったくの逆効果だ。
もし、自分が「リア充アピール」を、それと気付かずたれ流しているのであれば、それは、かなりかっこ悪い状態ではないか。
「リア充アピール」とは逆に「同情されたいアピール」とでも言うか、「生きてくのが辛い」や「落ち込んでいる」といったネガティブ系もちょっと厄介だ。
「大丈夫なの?」とか「元気出して!」とか、あたたかい言葉をかけてあげられればよいが、励ましの意味で「”辛い”と言葉で言えるくらいだったら、まだ大丈夫だ」とか、
「人生、この先もっと辛いことが待っているぜ」とか、コメントしてしまいそうだ。
すべては読んだ人個々の受け取り方次第、正直、自分には、そのさじ加減がよく分からない。
【ステマ包囲網】
昔から、どんな品質の悪い商品でも、テレビや新聞で広告を出せば、品質が良い(だろう)商品と一般大衆に認知されていた。
けして安くはない宣伝広告費を出せる大手の製品なので大丈夫(な筈)だ、と。
インターネットの世界でも、同じような錯覚は多々ある。
ブログやSNSで「XXXレストランのXXXは絶品!」などとあれば、一度食べてみたくなるし、
人物紹介などでインタビューを受けている人は、デキル人、時代の先端を走っているアントレプレナー、みたいな印象を受ける。
実際は、「絶品」は発信者がカネをもらって評価を書いていたり、「アントレプレナー」は中堅企業のサラリーマンだったり、印象とはかなり違っていたりする。
ステマ(Stealth Marketing)というのは、こういう受け手の錯覚や思い込みを、意図的にネットワークにのせて拡散して行く、新しい宣伝の一種だ。
もちろん、商品や人物が良いのであれば、なんの問題もない。
が、しかし、残念なのは「あのブログに出てたから」とか「ネットに出てた人が言ってたから」という理由だけで、自分の頭では判断せず「それが正しい」と思ってしまう人が居ることだ。
最近でこそ「マスメディアは常に正しいことを伝えている」と言い切れるお花畑さんは希少価値だが、
単なるネット上の個人の趣味趣向である筈のイチ「情報」が、すべての人が納得する「真実」のような扱いに昇格してしまうのは何か変だ。
突き詰めて言えば、これは受け手の情報リテラシーの問題だろう。
ネット上のみの「友達」が、素晴らしい人物と勝手に思えてしまうのも、錯覚という意味ではステマ効果の産物だ。
「友達」が「友達」を呼び、情報リテラシーの脆弱な人達の間に「素晴らしい人物」の輪が広がる。
その間に、自分の趣味趣向から属性情報まで、しっかりと、どこにあるかも分からぬクラウド上のNoSQLデータベースに、インデックス付きで整理されている。
これこそ、情報音痴、騙されやすい日本人の面目躍如だ。
巨額のカネを投じて構築したFaceBookのような仕組みを、なぜ、人々に無料で使わせているのか、これからアカウントを開く人は、
この理由をよく考えてからでも遅くはないと思う。
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SNSを有効活用している人達からは「コイツ、使ってもいない道具の負の側面ばかり挙げ連ねやがって、本当にネガティブな野朗だ」とお叱りを受けてしまいそうな内容になってしまった。
まあ、ぐじゃぐじゃ書いたが、一言で言えば「時間がもったいない」に尽きる。
SNSを便利な道具として上手く使いこなせる人は良いが、パチンコ依存症のようになること必至の自分には「これは、手を出さない方が無難だ」と判断しただけの話なのだ。
他者の生活の覗き見して羨んでみたり、ステマに踊らされたりする時間を、もう少し違ったことに使いたい。
本を読んだり、文書を書いたり、ギターの難曲に挑戦したり、もっと人と会って酒を飲んだり。
そして、どうせネットで情報発信するなら「今日のお昼は洒落たフレンチでした」などといったことより、もう少し賞味期限の長いネタをアップしたい。
夜、スマホやPCに向かい、日課のようにネットで繋がってる「友達」の動向をチェックする。
「友達」は増える一方なので、SNSを覗いている時間は日々長くなる。
一通り巡回し終えた後、また誰かが新しいコメントを入れ、それに反応する。
こんなことを繰り返しているうちに、もう寝る時間。
今夜も、読もうと思っていたあの本は本棚に積んだまま。
そして明日も同じことの繰り返し。。。
限りある残り時間(人生)、後悔しないようにしたいものだ。
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こじつけのようだが、今回の話題と関係なくもないので、最後に2014年に読んだ本を、以前のように記録しておこうと思う。 (これも、ある意味「リア充アピール」の一種だったりして。。。)
【[恒例]2014年読書記録】(2014/12/31現在)
1.[原発ホワイトアウト/若杉冽]
2.[50歳からの勉強法―自分の夢が実現する!/佐藤富雄](再読)
3.[知らないと恥をかく世界の大問題/池上彰](再読)
4.[知らないと恥をかく世界の大問題2/池上彰](再読)
5.[知らないと恥をかく世界の大問題3/池上彰]
6.[1万円起業 片手間で始めてじゅうぶんな収入を稼ぐ方法/クリス・ギレボー(著), 本田直之(編)]
7.[「要領がいい人」のすごい考え方/中島孝志]
8.[知らないと恥をかく世界の大問題4/池上彰]
9.[100年後の人々へ /小出裕章]
10.[学校では教えてくれない日本史の授業/井沢元彦]
11.[学校では教えてくれない日本史の授業(天皇論)/井沢元彦]
12.[「誤解」の日本史/井沢元彦]
13.[里山資本主義/藻谷 浩介]
14.[学びなおすと日本史はおもしろい/吉村弘]
15.[マネー・ボール/マイケル・ルイス]
16.[大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」/池上彰](再読)
17.[デフレの正体/藻谷浩介](再読)
18.[読むだけですっきりわかる日本史/後藤武士](再読)
19.[島国根性大陸根性半島根性/金文学](再読)
20.[日本人としてこれだけは知っておきたいこと/中西輝政](再読)
21.[世界を知る力/寺島実朗](再読)
22.[新歴史の真実 混迷する世界の救世主ニッポン/前野徹](再読)
23.[人間の叡智/佐藤優](再読)
24.[たかられる大国・日本/浜田和幸](再読)
25.[騙されやすい日本人/宮脇 磊介](再読)
26.[日本史集中講義 点と点が線になる/井沢元彦](再読)
27.[日本軍の教訓(いまだからこそ学ぶべき)/日下公人](再読)
28.[昭和史の謎を追う(上)/秦郁彦](再読)
29.[昭和史の謎を追う(下)/秦郁彦](再読)
30.[楠木正成(上)/北方謙三](再読)
31.[楠木正成(下)/北方謙三](再読)
32.[観光コースでないマレーシア、シンガポール/陸培春](再読)
33.[そうだったのか!日本現代史/池上彰](再読)
34.[国家の品格/藤原正彦](再読)
35.[インテリジェンス武器なき戦争/手嶋竜一&佐藤優](再読)
36.[日本のインテリジェンス機関/大森義夫](再読)
37.[昭和史 七つの謎/保阪正康](再読)
38.[知らないと恥をかく世界の大問題5/池上彰]
39.[官愚の国 日本を不幸にする「霞が関」の正体/高橋洋一]
40.[戦後 歴史の真実/前野徹]
41.[草莽枯れ行く/北方謙三]
42.[破軍の星/北方謙三]
43.[逆説の日本史9(戦国野望編-鉄砲伝来と倭寇の謎)/井沢元彦]
44.[逆説の日本史10(戦国覇王編-天下布武と信長の謎)/井沢元彦]
45.[逆説の日本史11(戦国乱世編-朝鮮出兵と秀吉の謎)/井沢元彦]
46.[逆説の日本史12(近世暁光編-天下泰平と家康の謎)/井沢元彦]
47.[逆説の日本史13(近世展開編-江戸文化と鎖国の謎)/井沢元彦]
48.[脳に悪い7つの習慣/林成之](再読)
49.[アジアビジネスで成功する25の視点/財部誠一](再読)
50.[古典で読み解く現代経済/池田信夫](再読)
51.[経済学の終わり「豊かさ」のあとに来るもの/飯田経夫](再読)
52.[頭がいい人、悪い人の話し方/樋口裕一](再読)
53.[仕事オンチな働き者/山崎将志](再読)
54.[自壊する中国/宮崎正弘](再読)
55.[修羅場の極意/佐藤優]
56.[人に強くなる極意/佐藤優]
57.[成功する男はみな、非情である。/角川いつか]
58.[ラクをしないと成果は出ない/日垣隆]
59.[外務省に告ぐ/佐藤優]
60.[警視庁FC/今野敏]
61.[まんがと図解でわかる7つの習慣 /スティーブン・R・コヴィー (監修)]
62.[55歳からのハローライフ/村上龍]
63.[小澤征爾さんと、音楽について話をする/小澤征爾,村上春樹]
64.[池上彰の宗教がわかれば世界が見える/池上彰](再読)
65.[中国農民の反乱/清水美和](再読)
66.[いつまでもショパン/中山七里]
67.[魔女は甦る/中山七里]
68.[これからの「正義」の話をしよう/マイケル・サンデル]
69.[日本の聖域 アンタッチャブル/「選択」編集部]
70.[生存者ゼロ/安生正]
71.[国境(上)/黒川博行]
72.[国境(下)/黒川博行]
73.[東京難民(上)/福澤徹三]
74.[東京難民(下)/福澤徹三]
75.[羅針/楡周平]
(№91. SNS疲れの皆様へ おわり)