日本の一般的な社会人なら、皆知っていることだが、世界的にみて日本国内のホワイト・カラーの人件費は異常なまでに高い。
為替や物価の関連もあるのだろうが、とにかく“突出している”と言っても過言ではない。
主婦のパート代や、ワーキングプアの人達の手取りだって、東南アジアの各国の賃金と比較すると“悪くない金額”に思えてしまうぐらいだから、
大企業の正社員(特にホワイト・カラー)の給与明細などは、海外現地法人のローカル社員が見たら、目玉が飛び出るほどの金額となる。
まあ、皆がその高額に見合った質の仕事をしていれば、それはそれで文句を言う筋合いのものではないが、
実際問題、海外現地法人のローカル社員に対して、それだけの価値(チガイ)を見せつけるのは、かなり大変なことではないかと思う。
もし、アナタの会社が大企業なら、きっと、こんな人達が居る筈だ・・・
定年退職日までを大過なく過ごすことが優先事項で、重大な意思決定が出来ないエライ人。
本末転倒な上層部の意思決定を、部下にスルーパスするだけの中間管理職。
そして、「指示されたからやりました」と、示された方向に向くしかない社員、等々・・・。
組織の色に染まりきっていない若手のかなでは、「何かが間違っている」、「こんなことが長続きするはずはない」と、素直に疑問視しているフレッシュな人もいるだろう。
しかし、2~3年もすれば、「組織なのでシカタガナイ」と、あえて声を上げることのリスクを知ってしまい、
2ちゃんねるで憂さ晴らしをするしかなくなってしまうのがパターンだ。
マスコミでは、TPPだ、超円高だ、新興国の追い上げだと、明治維新以来の危機が、すぐソコまで迫っていると危機感を煽っているのに、
大きな組織というやつは、未だに、沢山の高価な人材に「保身のたらい回し」のような非生産的なことをさせていて、よくまあコストを賄えるもんだと、
私などは、零細企業のやっかみ混じりに、他人事ながら関心してしまうのである。
新聞に「日本の大組織というのは、個々は優秀だが、集団となると極端にIQが低くなる」と書いてあったが、
旧日本軍、省庁、政治政党、そして大企業、結果を見ると残念ながら最近はYESの場合が目立つ。
そして、その低い集団IQが、時間とともに優秀でヤル気のある個々をまでスポイルして行くのだから始末が悪い。
仮に、そういうメンタリティの人が、日本で職を失い、単身、海外で仕事を探さざるを得なくなった場合、“現行賃金を維持”という条件では、
おそらく、殆んどの人がオファー・レターを手にすることが出来ないであろう。
1(US)ドルが500円とかになれば、日本人の基本的労働感や、品質重視の姿勢は、在外企業でも“買い”だとは思うが、現状は残念ながら、1(US)ドルが70円代である。
要は、単純に「優秀かも知れないが、創り出せる価値(結果)とコストの割が合わない」のである。
大企業の高額なコストは、結果的には消費者が負担しているのだが、消費者だってバカじゃない。 品質を向上させるためのコストが高くつくのは我慢出来ても、本来節減努力すべき、間接費という名の贅肉がたっぷりとのった製品やサービスなど、まっぴらゴメンだ。 そんな思いを反映してか、家電等、消費者に近い製品を作る日系大企業(それも名門企業)が、好調な中韓企業とは対照的に、かつてないほどの窮地に立たされている。 既に、事実上の身売りや、大量人員削減などは、ニュースとしてのインパクトは薄くなりつつあり、大型倒産報道の衝撃を緩和する“地ならし”完了の感アリである。
一方、海外。 以前、中国のホンダ(広東省)で「日本人と現地人の給与格差があり過ぎる」と、ストライキが発生し、こりゃ簡単に各国に飛び火するぞと警戒していたが 、とうとう、恐れていたことが起きてしまった。 インドのスズキ(マルチ・スズキ)の工場で、死人が出るほどの暴動が起きてしまったのだ。 当初、「日本人にも怪我人が出て、再開のメド立たず」と新聞に出ていたので、てっきり最下層の人達の暴動かと思ったが、 襲ったのが下層階級ではなく、中流インド人労組の人達ということでビックリ。更には、警察が当初は傍観していたという情報も衝撃的であった。 続報によると、殺されたのは人事担当の現地人幹部で、日本人幹部も“殴られた”らしいので、やはり待遇面での不満が爆発したのであろう。 そして、中国では、尖閣諸島の国有化を契機に、2012年9月17日現在、政府黙認の日本製品不買運動や、 日本大使館への抗議デモ、そして、旅行者への嫌がらせ等々、今後もエスカレートするばかりの状態なので、メインランド・チャイナの日系企業、 それも低賃金工員の多い工場では超ハイ・アラート状態であろう。 冷静な抗議ならともかく、理性を失った一部の暴徒は、国内ですら厄介者扱いだ(中国版ツイッター「微博」などでは冷静な意見も多々あるようで、本当に救われるが)。 デモの様子をYoutubeなどで見ると、これはもう尖閣諸島の問題というより、格差社会への鬱憤晴らし行動とみたほうが良さそうだ。 そして、その攻撃対象は、党幹部や国内富裕層のみならず、所得の高い日本人も含まれていることは想像に難くない。
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再び日本国内。 留まる限り高所得を保証してくれる大組織という孤島で、世界の労働市場からはガラパゴス化してしまった国内ホワイト・カラー達にとっては、 今後予想されている“世界複合恐慌”などは、ソマリア状勢などと同じく、新聞で読むだけの他人事なのであろうか? あまり突き放した言い方ばかりしていると嫌われてしまうので、言い方を変えよう。 既に、中小・零細企業では、「今迄の売値では商売出来ませんよ!」と国内マーケットから宣告されていて、 更に、海外マーケットからは「現地価格で勝負してね!」と、ドラスチックな体質改善(言葉にすると陳腐だ)を余儀なくされている。 「アンタ達、下請だから先に苦しむのは、構造上しゃ~ないよね?」と言われればそれまでだが、 まったく同じ要請のしわ寄せが、日本の大企業にだって、現場には届いている筈である。 先進国で一足先にデフレに突入した日本国内では、同じ製品が以前の価格で売れる保証はないし、 まして、海外コンペティターとの価格競争は「もうやってられない」レベルなので、内外大中小零、どこもツライことには変わりない。 欧州、米国の状勢を見ると、泣いても笑っても、もう、日本の状況は以前のようには戻らないだろう。 立場の違いこそあれ、我々日本人ビジネスパースンの置かれている状況は非常に厳しい。 厳しいなか、現状を他人事扱いしていたり、「本当はヤバイかも?」と表面的な悲観だけをしていては、座して死を待つに等しい。 そう、未だ、余力のあるうちに、打開策を考えようではないか。
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身も蓋も無い言い方だが、今、求められている人材とは、 「高度な専門性があり、語学に堪能で、強いリーダーシップと人間力があり、セールスにも長けているけど、給料はグローバル・スタンダード」 な人間である。 以前、人材募集に応募してきた大企業経験者の人が、ちょっと上から目線だったので、自分の非力を棚に上げて、これに近いことを言ったら、「そんな実力があれば、自分で独立してやってるよ!」と逆ギレされてしまった。 確かに、理想像を言っていてもはじまらない。 そして、語学だ、強いリーダーシップだ、リーズナブルな給料だと、個別のテクニックや属性に拘泥していると、環境が変化した場合に、理想像を入れ替える必要が生じてしまうので、本質的な話ではないとも言えるであろう。
以下は、私自身がビジネスや生活の中で、大切にしたいと思っている信条である。
「Logical Thinking」や「Why思考」といったものとも共通点はあるだろうが、難しいことを抜きにして、
中小・零細企業の経営者なら、誰でも実践せざるを得ない“考え方”&“実践法”である。
どれも、当たり前過ぎて肩透かしのようであるが、大きな組織の人ほど、遠いところに居る気がしてしようがないのである。
【リアルな危機感をもつ】
3.11
以来、マスコミでは「危機感の欠如」という言葉が多く語られてきた。
しかし、殆どが結果論の後出しジャンケン。
糾弾される側は、確かに「危機感の欠如」なのだろうが、事後に指摘する方はイージーなので勝負にならない。
尤もらしい言葉だが、私は、ある意味、思考停止的キーワードだと思っている。
大切なのは「リアルな危機感」をもつことだ。
最近、大手の入社式などでは、社長が「危機感をもって仕事してほしい!」と挨拶している報道が多いが、
ふりかえって、既に在籍している中間管理職達が、どれだけリアルな危機感を共有しているのかは、甚だ疑問である。
貢献度ゼロだろうが、失敗を重ねようが、決まった日にお給料が頂ける状態で、リアルな危機感を持てといわれても、それは無理なはなしだ。
日経新聞読んで「ユーロ危機とアメリカの“財政の崖”で2013年は日本も大変になるぞ!」などと危機意識あり気な人も、休日になれば、
今の暮らしが永遠に続くが如く、ノホホンと遊んでしまうものだ。
じゃあ、リアルな危機感をもつには、どうすればよい?
簡単だ、失業すればよい!!・・・半分冗談、半分本気だ。
現状の既得権(地位や報酬)を全部リセットして、自分の市場価値を再確認すべくシミュレーションすること。
(自分に何が出来るか?、再就職するか?、自営になるか?、子供の教育費は?等々)
これで、リアルな危機感が持てなければ、アナタは相当優秀な人間か、もしくは、「生きてるだけでおっけ~♪」の脳天気な人だ。
今の時代、おそらく、殆どの人が「色々不満もあるけど、意外と現状ってステキ!」となるのではないか。
ただ、その“ステキな現状”も、いつまで続くは不確実な時代だ、今の仕事で、どれだけ“本物の価値”を創造しているかを、自分で問い続けないと、
シミュレーションが現実になってしまう。
【意思決定を無駄に延ばさない】
概して大きな組織は意思決定が遅い。
なかには“遅い”を通り越して“出来ない”のではないかと疑ってしまうこともある。
意思決定がメインの仕事の筈の上級管理職の中にも、どうしてこんなに時間がかかるのかと、不思議に思うくらい結論が出せない人(組織)が居る。
その裏には、責任をとりたくないという保身があるのだろうが、部下に無駄なパワーポイントを作らせ、トップへ説明するための“作文”を吟味し、結論の出ない会議をダラダラと重ねて、意思決定を先延ばしいる、なんて例が、どこの組織でも多いのではないだろうか。
個々の組織には、色々な事情や、複雑な人間関係もあるのだろうが、敢えて、意思決定すべき立場に居る人達へ向けて、意思決定を待っている立場の人達に代わって言いたい。
『集団合議制も右肩上がりの裕福なときは良いが、スピードが肝心な今の時代、優柔不断による時間の浪費は、機会損出やコストの垂れ流しであるばかりでなく、有能な部下からの評価も下げてしまい、結局は自分にとっても損なことだと自覚したほうが良い』と。
私は、非常にエラそうで恐縮だが、自分の中では、他人の時間を無駄にする人は、どんなに地位が高い人でも“デキない奴”のレッテルをはってしまうのだ。
意思決定が出来ない→責任をとりたくない→貴重な他人の時間も無駄にする→つまりは傍観者以下。
傍観者以下の人達に、毎月毎月高いおカネを払っている国が、低コストで挑戦してくる新興国の追随を振りきることは、無尽蔵の天然資源でもない限り難しい。
【成果で計る】
メジャー・リーグに行った松井秀喜は、日米で実績も残しスーパースターであるのに人柄まで良い。
デビュー以前から並みの選手とは違っていたし、今でも“商品価値”は充分にある。
もし、彼がジャイアンツを2003年に飛び出さなかったなら、日本の組織としてのジャイアンツは、今、彼を“路頭に迷う”ことはさせていないと思う。
でも、今現在、彼は、戦力外通告を受けて(巨人復帰の噂もあるが)“求職中”の身である。
サラリーマンの世界であれば、「松井君も、あの時外資系に転職しなければ、今は当社の役員にはなれた器だったのにな、外資は厳しいからね~」
と、元同僚に揶揄されているような立場かも知れない。
しかし、彼の頭の中には、「日本を飛び出さなかったら、今も安泰だったかも知れない」などといった考えはまったくないであろう。
「とにかく、上のレベルでプレーしたい」、「野球をずっと続けたい」、「ベストを尽くして、結果は結果として真摯に受け止める」
それだけなのではないだろうか。
プロスポーツの世界は、結果が数値で出てしまうので非常に厳しい。
会社という組織も、それが全てとは言わないが、結果は数字だ。
良い結果が残せないと、プロスポーツ選手同様、会社ごと業界から退場しないといけない場合だってある。
しかし、日本の大組織で働いている大多数の人達のメンタリティーは、プロスポーツ選手とは対極だ。
この意識ギャップを、人間的なやり方で縮めて行く努力が、大切だと思っている。
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危機感が薄く、意思決定が出来ず、成果軽視。 自戒を込めて言うが、この、負の三拍子が組織に蔓延していたら、今現在好調であろうと、早晩、黄信号が灯るだろう。 前にも書いたかも知れないが、私が子供の頃は、国が企業を支え、企業が従業員とその家族を支えていた。 年功序列と終身雇用というシステムのなか、日に日に生活が向上して行く高揚と、守られている安心感が、 「脇目も振らず、従順に働いていれば、幸せになれる」と、人々から野生の感覚を奪い取ってしまった。 極東の島国で、高度成長期に巨大化してしまった、このひ弱なガラパゴス。 野生の感覚を取り戻すには、かなりのショック療法が必要なのは間違いない。
(№76. ガラパゴスの代償 おわり)