№24.浪費税


日本では今年もボーナス時期が過ぎて年末の慌しい季節になってきた。零細企業の経営者(つまり私)にとって最も嫌なこの時期を、非常に厳しいご時世にも関わらず楽な気持ちで乗り切れたのは優秀なスタッフのお陰だと感謝している。しかし、久々に業績が良くて喜んでいられるのも束の間で、2ヶ月もすると会社の利益にかかる法人税や取引にかかる消費税という落とし穴でもがくことになるのである。この“税金”という嫌われ者、勿論我々が日本人として健康で文化的な生活をしていく為に必要不可欠であり国や地方自治体という基盤を支える大切なものであることは理解出来る。まして妥当な税率であれば社会への義務として払うのもあたりまえだと考えている。が、どうもその使われ方や作られ方に納得いかないことが多く、銀行への公的資金投入以来かなり頭に来ているのである。


普通の会社員の場合は毎月給与から源泉徴収というやつで給与の一部が自分の懐に入ることもなく会社経由で税務署へ行ってしまう。若い人の中には年金や健康保険などの控除も税金だと思っている人もいるようだが、ここで問題にしているのは所得税と前年分の所得にリンクしている地方税(住民税)などの“税金”だ。毎月会社が税務署に代わって所得税の計算を行い、決定済の地方税と共に給与からひっぱり翌月の10日迄に銀行や税務署に出向き納付する仕組みだ。勘定のうえでは翌月の10日迄は“預り金”として会社にプールされる為、バブル絶頂期の儲かっていた時期から納付していなかった関西のノンバンク(勿論その後倒産)は例外としても、資金繰りの苦しくなった会社はこの金に手をつけてしまい預かった従業員の税金を払えなくなることもよくある話だ。これは毎月のことなので滞納すると膨らむのも速く延滞税などと合算するとかなりの額になってしまうので経営者にとっては要注意だ。一方従業員側は、年末になると過納分が年末調整で戻って来る場合が多い為「12月はボーナスも出るし、月給もすこし多いので嬉しい!」なんて思っている人が居ると思うが、そんな人はかなりのお人好しだ。請求ミスで多く引き落とされてしまった電話代が返金されたようなものなので本当は「利息をつけろ!」と言っても良いくらいなのである。


さて話を本題に戻そう。会社や一般大衆の所得から集めた血税をこの国のお役人はどんなに無駄に使っているかを引用だがここで要約してご紹介しておこう。まずは高給取り役員さんに中央省庁からの天下りが多い特殊法人だ。一般会計から4兆円を超える資金が流れ50万人もの職員を養っていると言われている。実際に民間企業として補助無しで世間の荒波に晒したら存続価値を問われて破綻する法人も多い筈の無駄金使いである。そんなところの役員が年収3,000万~5,000万も懐に入れている金の出所は税金である。本当に必要な事業で競争原理の民間ベースでは無理のあるものならばその価値も認めるが、天下りの温床でしかない法人などは即刻廃止もしくは民営化して勝負させるべきである。次に“金融システムを守る”という大義名分で銀行に投入した公的資金も許せない。既に長銀や日債銀などはなくなり債権回収もままならないばかりかゼネコンなどへの債権放棄などを通して税金を借金の棒引き補填資金として流用しているのである。別に銀行が自分の裁量で経営難に陥った会社の貸付金をチャラにしてやるのであれば銀行の株主でもない私は文句を言わない。が、間接的にしろ何で我々の税金で一民間企業を助けてやらなければならないのか不可解だし明らかにルール違反である。もし、零細企業のオヤジが「明日の手形100万が落とせないから税金で負担してくれ!」と頼んでも100%相手にされないのに何故かゼネコンの気の遠くなるような額の借金はOKなのである。以前、借金の棒引きをしてもらった建設会社の本社ビルで幹部らしき人が高級車にのり外出しようとしているところを見たとき、無性にハラが立った記憶があるがその後その会社は潰れてしまい結局銀行の不良債権を税金を使って増やしただけだったようだ。銀行も銀行で税金の補助を受けながら一般企業よりかなり高い給料を出しているのは一般企業の納税者を馬鹿にしているとしか言えない事態だ。高い給料取ってるのだったら少しは消費者金融(俗に言うサラ金)を見習い債権回収に努力してもらいたいものである。その他にも無駄な高速道路や超豪華な公共施設の建設(グリーンピアって何アレ?)、効率の悪い役所業務等々返すあてのない借金(国債や地方債)をしてまで継続すべきものなのか子供が考えても明白なものが多いのは犯罪的である。大震災の被災者への補助やハンセン病患者への補償等もっと手厚くすべき部分は渋りながら湯水のように税金をドブに捨てていく日本の官僚や政治家達、いったいこの国は税金を使って何を創り何を守りたいのだろうか。


ここまで読んで「ふざけんじゃね~よ!」と思わない納税者がいるだろうか?時代が時代ならアルゼンチンのように暴動が起きても不思議ではない。最近のニュースで『特殊法人廃止』や『天下りを制限する議論』そして『渡り(関連法人を渡り歩き高額な退職金を何度も貰うこと)の禁止』などが話題になっていて小泉首相は良い方向に向かっている事を協調していた。確かに国民に実態(の一部?)を知らせ且つ改善の方向へ舵をとった功績は大きいがまだまだ生温い。極端な例だが「今まで毎日りんごを100個盗んでいた泥棒が、これからは50個しか盗まないことにした。」と言われても泥棒は泥棒である。「盗みを止めました。今までの罪は反省し且つ償います。」と言って初めて常識の範囲内なのである。兎に角、血税で私腹を肥した者、業界との癒着で国民に不要なモノやサービスを押し付けた者、政策の失敗で国民に損害を与えた者達はそれぞれ悪意のレベルは違うが裁判で責任と罪を問うべきだと私は思う。


次は税の作られ方だ。一般的な中小企業の場合だが収入が減ってきたときは自助努力により経費を圧縮し当然支出を少なくするであろう。また、収益向上の為に創意工夫を凝らし生き残る道を探し続ける。危機には経営者は私財を注ぎ込んででも存続を図ろうとするであろうし、減給や帰休そして決してやりたいとは思わないがリストラなども当然の選択肢だ。現状はそこまでしても立ち行かなくなる場合も少なくないのではないかと思う。それに引き替えお役所のやり方は実に安直だ。税収が減れば何かにつけて増税で賄おうとする。見せかけだけの自助努力や実効性のない上辺だけの再編などで国民の理解が得られると思っているのが気に食わない。何で今更発泡酒やタバコの税率をいじる必要性があるのか、何で今ごろホテル税なんかが出てくるのか。こんな状況下で“取り易いところから取る”なんて、遊ぶ小遣いが無くなったからパシリを脅して巻き上げる不良中学生の発想と大差ないではないか。挙句の果てには消費意欲を大きく減退させる消費税率を再度UPしようとしているらしい、そうなれば役所の計算上は増収だろうが実態はデフレ加速で更に悪い状況を予想してしまうのは私だけだろうか。あたりまえ過ぎて書くのも気が引けるが、増税や新税を考える前に無駄な事業、人員、経費、その他全てを見直し本当に必要ならば堂々と増税すれば良いのである。「公共事業で食べている人達と公務員の生活を守る為に金がいる!」では本末転倒である。


今回は一方的に怒りをぶつけただけで、真面目に仕事をしている公務員の方々には失礼な言い方もあると思う。しかし、増え続ける国の借金つまり財政危機への対応は待った無しに迫られているのは事実だし、横行するお役人の不正の前では襟を正してもらわなければ我々国民は納得しないのである。しかし、私も納税者を隠れ蓑にして『勝手なことの言いっ放し』では申し訳ないので、是非別の機会に素人なりの問題解決に向けてのアイディアを書いてみたいと思う。また、このサイトを訪れてくれる人の大多数は“納税者”であると思うが、これを機会に税の使われ方や作られ方に注目し、もし納得のいかないことがあれば無知を恐れずに市民としてどんどん発言して行こうではないか。子供達に「何でお父さん達はこんな状態になるまで黙っていられたの?」なんて言われない為にも。


(№24.浪費税 おわり)

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