№17.休日のオフィスで


最近、生活のテンションが低くてモノが書けない、いや書く気がおきないのだ。このコーナーの更新もかなり間が空いてしまった。何故だろう、先月(2001/4)はバンドで3回もライブハウス等に出演して3回ともかなりの出来だったので燃え尽きてしまったのだろうか?それとも、引っ越してから毎日通勤で往復二時間も慣れない車を運転する破目になったストレスか?テレビも見ず、かと言って本を読む気もせずノーインプットな日々が続いている。こんなときは旅行にでも出掛け普段と違った環境に身を置くのも良いと思うがゴールデンウィーク中は仕事の関係で“行方不明”になるワケには行かなかったのでひたすら狭いオフィスで仕様書作りとインターネット三昧をしていた。(ゴールデンウィークと言ってもそれは日本のことで、ここマレーシアでは今年は5月1日(火)の Labour Day と 5月7日(月)の Wesak Dayを土日に加えても最長三連休の ごく普通のお休みでしかなかったのだが...)そんな訳で今回は“ホームページを更新する!”ということのみを目的として休日のオフィスでダラダラとはじめよう。


休みの日にオフィスに来るのは結構好きなほうだ。朝は定刻までに着く必要も無いうえに道はガラガラなので運転も気持ちが良い、契約上電気代はタダなので自宅では電気代節約の為に健康上好ましく無いという名目であまり付けないクーラーだってガンガンだ。また、ローカル社員は休日出勤などという概念はほぼ頭に無いため、誰も居ないオフィスでノンビリ好き勝手に過ごす事が出来る。小腹が減ったら近くのオープンエアーのレストランに行ってテ・アイス(アイス・ミルクティー)とロティ・チャナイ(クレープ&パイのようなパン、ちぎってカレーをつけて食べる)の軽食をとりながらぼんやりとインドの流行歌を聴く。しっかりと食事がしたかったら車を10分くらい飛ばしてSS2という屋台街へ行きミースープ(ミー=麺,スープ=汁)などを食べた後マレー菓子などをデザート代わりに買って帰って来ることだってOKだ。腹いっぱい食べたって100円~200円くらいの値段なので、その美味しさと重ね合わせるとかなり幸せな気分に浸れるのだ。これらローカルフード店は相当私の生活に密着したものになってしまっているのだろう、昨年のクリスマス休暇から正月休み迄気合を入れて仕事をした時には近くのレストランや屋台がほとんど閉まっていたので本当に寂しかった。


現在の私のオフィスはAlpha Executive Centerという貸事務所屋さんの中にあり、その中には日系の電子機器会社の出張所やローカルの会社が15社くらい入っている。そこでは受付業務や電話交換は言うに及ばず、客に出すコーヒーの手配、郵便物の発送、部屋の清掃等々雑務は全てやってくれるので家賃は高いが余計な人件費がかからず気楽である。各会社の部屋はオートロック&オートパワーオン/オフ(エアコンとライトが入室時オンになり、退出後30分でオフになる仕組み)で一年中24時間使用可能である。あのiMacで有名なパソコンの老舗Apple Computer社のオフィスもあり、以前私が借りていた部屋が手狭になったときにちょっと大きめなAppleの部屋と交換してもらったこともあった。世界のAppleが狭い部屋へ移り、弱小CSLが大きな部屋を借りるなんて冗談みたいな話だが、引越しの時は実にいい気分だった記憶がある。引越しの後12階の窓から見えるIBM社の青いPCサーバのようなビルを指差して“次はあそこだな!”なんてローカルと冗談を言ったものだ。


日本では休日出勤は別に珍しいことではないが、マレーシアでは休日手当てが高いせいで会社が禁じているのか、労働感の違いからか休みの日に“誰かは出ている”なんて状態はまず無い。私の事務所のあるフロアーでも日曜日には人っ子ひとりいない。たまにビル全体の警備にあたるガードマンが使用するのかエレベータが動いていたりするとかなり不気味である。地下1階~3階まである広い駐車場も無人ではちょっと怖いので休日は自分のエリアであるB2には駐車せず地上の他人のエリアを使用することにしている。今まで一番怖い思いをしたのは昨年末のことだ、この頃はまだ自宅と会社が近く気軽に何度でも往復できる距離であった為休日に出社してローカルの作ったプログラムをチェックしていた。気に入らない部分を直していくうちに上手く動かなくなってしまいちょっとハマッていたが家に帰ることにした。夕食後シャワーを浴びて寝ようとしたその瞬間に、ふと解決方法が頭に涌いてきたので再度会社のサーバを使いに出かけていった。(このあたりの行動はプログラミングに携ったことのある方は理解して頂けるとおもうが...)思惑通りその件は解決したのだが調子に乗って自分流に改造し始めたら結局朝になってしまい早朝6:00頃に帰宅することにした。マレーシアでは朝の6:00はまだ真っ暗なため恐る恐るエレベータにのり“途中で停まりませんように”などと祈りながらグランドフロア(日本の一階)まで無事たどり着いた。“これで安心”とドアーが開いた瞬間心臓が口から飛び出るかと思うくらいビックリしてしまったのだ。そこには首を90度近く曲げて体を折りたたむようにして痩せこけたマレー系の男が倒れていたのである。てっきり死体だと思った私は仰天しながらもその時咄嗟に考えたことは「眠いのに第一発見者になると寝られなくなるかも」と「犯人扱いされたらどうしよう」だった。気をとりなしてその男をよく見るとビルのガードマンの服を着ている、そこでやっと恐怖心がなくなった。真相は簡単“徹夜勤務のガードマンがサボって仲間に見付からないようにして狭いエレベータホールの横に体をくねらせて寝ていただけ”だったと自分では解釈している。実は私は驚きのあまりその男が目覚めて動き出すのも、呼吸をしているのも確認していない。ただ、その後も「殺人事件発生」や「事故発生」の知らせを聞かないので“寝ていただけ”と思い込ませている。また、一瞬だけだが死ぬほど恐怖心を味わってしまったのであれから徹夜は一回もしていない。


冒頭に「生活のテンションが低くてモノが書けない!」なんてエッセイスト気取りで書いてしまった矢先に、某大手新聞社の発行する週間雑誌より「原稿依頼」なるものがメールにて舞い込んできた。このウェップページをみて打診して頂いたようなので非常に嬉しい。もちろん一発モノで小さな枠であろうけど、書いたものが出版に値するか判断して頂く良い機会だと思っている。書いている本人が6~7人しか読んでくれている人の顔が思い浮かばないようなこの小さなサイトも、世界のどこかで見知らぬ誰かに読まれてると思うとやる気が出てくるものだ。しかし、あまり気合を入れて書いても面白いモノが書けるとは限らないし、ましてプロのライターでもないので、あくまでマイペースでやらせてもらおうと思う。張り切りすぎて徹夜になったりして、またオッカナイ思いしたくないからね。


(№17.休日のオフィスで おわり)

前のページ/ 目次へ戻る/ 次のページ