№109. 「おうち時間」の過ごし方(ふたつのデビュー)

長い間放置していた、いや、存在すら忘れていた完全オワコンのこのコラムを、突然更新する気になった理由は単純だ。 つい最近、WEB経由で、そこそこの規模の仕事が舞い込んで来たからだ。 もちろん、ダイレクトにこのサイトにアクセスしたワケではないだろうが、せっかく辿り着いたサイトの更新日が、半年も前の日付だと「なんだ、この会社終わってるな。。。」と判断され、選択肢にもしてもらえない可能性が大だろう。 現在2021年5月7日、マレーシアの首都クアラルンプール(KL)にも、チャイナ・ウイルス(COVID-19)による3度目の移動制限(MCO:Movement Control Order)が発令され、スタッフは皆オフィスワークから在宅勤務に変更になってしまった。突然管理職の仕事を失ってしまった身(笑)としては、せめて会社のサイトでも更新して「この会社、まだ生きてますよ!」感を醸し出し、少しでも会社に貢献しようといったワケだ。


「何か書こうか?」と、迷うほどのネタもないのだが、時節柄「おうち時間」の過ごし方に絞って二つほど書いてみようと思う。 テーマは月並みだが「読書」と「Youtube」だ。コロナ禍では、どちらもなくてはならない存在だと思われるが、 今後も「ステイホーム」を長期に強いられるとの予想から、今年になって私は、両者へのアプローチを若干変えてみた。 その結果が「電子書籍再デビュー」と「YouTuberデビュー」のふたつのデビューである。 今までけっこう頻繁に行っていた海外旅行も禁止され、日本出張時の書店巡りも出来ず、地元パブ等でのライブ演奏の機会も失い、ひたすら単調な暮らしを送るだけであったが、やっと、時間を忘れて熱中出来るものが見つかり「これなら移動制限が長引いても大丈夫だ!」 との実感が持てたことの報告でもある。


[電子書籍再デビュー]
このコラムの下部の読書記録でも分かる通り、去年(2020年)は読書量がかなり減った。 コロナのせいで家に居る時間が長くなり、じっくり読書が出来そうなものだが、加齢のためか、YouTubeで米大統領選の報道に目が離せなかったためか、 兎に角、目標100冊に対して58冊の実績は、ここ数年ではかなりの落ち込みだ。 原因を知りたくて、手帳等で記録を調べたら、日本出張の際に大量に話題の本を買い込んで来た後の「まとめ読み」がないのが主因のようであった。 普段は、KL日本人会で大量放出される廃棄本や、旬が過ぎて安価で売りに出されてる文庫本などを買い溜めて、ランダムにジャンルや興味を無視して読むなか、年に数回の東京出張の際に、20冊くらい旬の書籍を買ってくることがパターン化していた。 出張直後は、新しくも興味深い内容の本が沢山手元にあるため、次々と読破し、その勢いも手伝って、以前から溜めてあった本にまで手を出し、かなりの冊数を稼いでいたことが分かった。


「原因が分かれば対策は簡単だ!」とばかりに、KLの中心街(KLCC)にある紀伊国屋書店に行き、今読みたい本を多めに買ってみた。 確かに今読みたいと思う本は、スイスイと読めて冊数も稼げるのだが、問題は予算だ。 マレーシアの物価は、最近は上がったとは云え、だいたい日本の1/2〜1/3くらいの感覚だ。 そんな環境のなかで、新品の日本書籍は、おおよそ日本の4割増しなので、日頃、タダ同然で古本を仕入れている身としてはかなりイタイ。 東京出張のときは、トラベラーズハイで金銭感覚もかなり鷹揚になっているが、それでも「本は高いな」と思うのに、年間数十冊を「4割増し」で買い続けるのは気分的にも無理だ。そんな葛藤を尻目に日本では興味深い新刊が次々と売り出されてネットで紹介されてゆく。 そんななか、あるとき(右寄りの)友人と話をしていて「前川さんから借りた本、面白かったよ。外国人に説明する良い資料になるので、自分も電子書籍で買ったよ!」と言われ。「あっ、その手があったか、すっかり忘れていた!」と、自分の記憶力・想像力の無さを改めて思い知るのだった。


実は以前に、iPodで書籍、そして、iPadで新聞を読んだりしていた時期があったのだが、意外と気に入っていたiPodは、呑み屋で紛失して敢なく終了。 iPadは新聞アプリがポンコツ過ぎてストレスが溜まるので、新聞自体を読むのを止めてしまっていた。 それ以降は書籍や雑誌をネットで購入するなどという感覚はなくなっていたが、今回の友人の一言で、早速キンドルを契約して、スマホとMacBookで最新刊を読める環境を整えたのだ。 年間100冊が目標だと月に8冊〜9冊のノルマが課せられるが、この時点で目標の1/3も達成していなかった。 「さあ、これから挽回するぞ!」と、読み放題を契約し、手始めに比較的読み易い(=内容の薄い?)ライフハック系から読み始めた。 読み終わると、お勧めが次から次と出てきて、『向上心』を煽るので読書に勢いがつくし、ページが進むススムすすむ。 ついでに紙書籍も弾みがつき、その時点での目標を軽く超えてしまった。 自分が当初の目標地点より先に到達していると自覚すると、今度は長編でもじっくり読んでみるかと、余裕が出て来るので、ポチ、ポチと新刊を買いまくるのだ。 何冊選んでも重さもないし、財布も取り出さずに買えてしまうので、買い過ぎのリスクは電子書籍の数少ない短所と言える。 一方、利点は、拡大文字、英語の単語辞書、検索、等々色々あるが、やはり、自分のような海外に居住しながら日本語の本が買えるということに尽きる。 遅まきながら電子書籍という強い味方を得て「おうち時間」の充実度が少し上がったのだった。


紙の書籍で再読した渡部昇一氏の著作に「晩酌をする編集者は著書を残していない」と書いてあった。 要は「酒を呑む人は夜の使い方が下手、勉強を深堀りする時間を捨てている」ということだろう。 確かに、御説御尤も、自分は酒好きで、ほぼ毎日晩酌するので、酒で時間を無駄にしているという自覚は痛いほどある。 まあ、ポチ、ポチと買い込んでしまった電子書籍があるので、せめて一時間早く起きて、暗いベットの中でスマホ片手の早朝読書で、前夜捨ててしまった時間を取り戻そうと思う。


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[YouTuberデビュー]
ちょっと前に、新しいギターを買った。 安い買い物ではなかったが、友人と楽器屋をひやかしていたとき、数年ぶりに手に入れたいギターに出会ったからだ。 コロナの自粛生活の反動もあったのか、その後、通販サイトで、見た目は小型だが、家で鳴らすには出力がデカ過ぎるアンプも買ってしまった。 このギターとアンプの組み合わせで出した音を、先の友人に伝えるために、プロの録音をバックに一曲弾いてスマホで撮影してみた。 何回か撮り直したあと、まあまあイケてるなと思ったバージョンのMP4を送る段階になり、ファイルサイズが異常に大きいことに気付いたのだ。 これをそのままLINEで送るのも迷惑かと思案していたが、「あ、一時的にアップしたYoutube経由で観せればイイ!」と思いつき、早速実行してみた。 タイトルは「仮(近日削除予定)」だったと思うが、一見、よくある「弾いてみた」系の動画のように見えたようで、友人から想像以上に良い評価を貰ったのがコトの始まりだ。


友人から、思わぬ高評価を得て調子に乗ったので、今度は、それぞれ別々の国で暮らす3人の子供達に、「削除前提」として、YoutubeのURLをメッセージアプリで送ってみた。 3人共良い反応を送ってくれたが、特にシンガポールで音楽関係の仕事をしている長男から「これだけ弾けるなら、消さないで、記録としてどんどん追加すれば良い!」と、現役のプロから煽てられたのは大きかった。 言い換えれば「老後の心の張りを保つためにも続けたら良い!」と、云ったところだろう。 まあ、自分としても、楽器を演奏する限りは、他者に披露したいという願望(承認欲求)は隠せないし、ライブを想定しての練習にはうってつけなので 「公開練習のようなつもりで、やってみようかな!」となったのだ。今思えば、このときが、還暦過ぎギター・ユーチューバー誕生の瞬間だった(笑)。


Youtubeにアップする自分の動画に条件を付けた。 「録画・録音機材はスマホのみ」と「必ず一発撮り(編集なし)」のふたつだ。 理由は簡単、機材や編集方法に凝ると時間とカネがかかるからだ。 裏の理由としては、高級機材やDTMで作ったツギハギ動画ではなく「良くも悪くも実力のままを記録したい」と思っていることが大きい。 機材やソフトウェアに頼れば、それなりの質は保てるかも知れないが、いつでも演奏が中断可能で、且つ、いいとこ取りが出来ると、緊張感といった観点からも、主目的のひとつである「ライブ想定の練習」にはならない。 こじつけのようだが、この「おうち時間」での緊張感こそが、免疫力を高め流行り病を撃退し、ひいては老化を防ぐための特効薬だと密かに思っている。


まだ始めてからひと月も経っていないので、数ヶ月後には更新が止まり、視聴者数カウンターもストップして、捨てアカ扱いになっているかも知れないが、 たまたまこのコラムに辿り着き読んだ方は、何かのご縁なので KL Guitar Simple Man を検索してみてくだされ!


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チャイナ・ウイルス(COVID-19:新型コロナ)という病気の深刻度や、ワクチン狂想曲に踊る各国の政策に関しては、常に疑念を抱きつつ、自分自身が踊らされぬように、陰謀論も含めて、メタ認知を利かせて傍観しているつもりだが、日本やマレーシア政府の政策には、首を傾げざるを得ないものも多々ある。 しかし、ソクラテスが言ったように「悪法もまた法なり」なので、政府にたて突くような言動は控えつつ、理不尽な半強制はかわして行くしかないと、若干軟弱だがそう思っている。 この時節を生き抜くためには、自分の体力とメンタルを正常に維持し、免疫力を高めることが何より大切だ。 「おうち時間」を有意義にすることも、それ自体が現在のサバイバル術のひとつなのである。 皆さん!この長期戦を勝ち抜き、是非とも、今回の禍の原因を突き止め、そして、その原因を作った犯人に責任を取らせましょう! やられっぱなしは、もうごめんです!!。


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【[恒例]2020年読書記録】(2020/12/31現在)
目標「100冊!」が恥ずかしい、2020年は完全敗北を認め、2021年から再挑戦です、ハイ。


[2020年]
1.[逆説の世界史1 古代エジプトと中華帝国の興廃/井沢元彦]
2.[逆説の日本史1 古代黎明編-封印された「倭」の謎/井沢元彦]
3.[逆説の日本史15 近世改革編-官僚政治と吉宗の謎/井沢元彦]
4.[5Gビジネス/亀井卓也]
5.[教養としてのロック名盤ベスト100/川崎大助]
6.[ローマ人の物語 01 -ローマは一日にして成らず〔上〕-/塩野七生]
7.[ローマ人の物語 02 -ローマは一日にして成らず〔下〕-/塩野七生]
8.[ローマ人の物語 03 -ハンニバル戦記〔上〕-/塩野七生]
9.[ローマ人の物語 04 -ハンニバル戦記〔中〕-/塩野七生]
10.[ローマ人の物語 05 -ハンニバル戦記〔下〕-/塩野七生]
11.[ローマ人の物語 06 -勝者の混迷〔上〕-/塩野七生]
12.[ローマ人の物語 07 -勝者の混迷〔下〕-/塩野七生]
13.[ローマ人の物語 08 -ユリウス・カエサル ルビコン以前〔上〕-/塩野七生](再読)
14.[ローマ人の物語 09 -ユリウス・カエサル ルビコン以前〔中〕-/塩野七生]
15.[赤・黒 池袋ウエストゲートパーク外伝/石田衣良]
16.[小説 ザ・外資/高杉良]
17.[骨音 池袋ウエストゲートパークⅢ/石田衣良]
18.[電子の星 池袋ウエストゲートパークIV/石田衣良]
19.[クレイジー・ボーイズ/楡周平]
20.[虚像(メディア)の砦/真山仁]
21.[花筐/檀一雄]
22.[プレゼンテーションの英語表現/デビット・セイン、マーク・スプーン]
23.[ローマ人の物語 10 -ユリウス・カエサル ルビコン以前〔下〕-/塩野七生]
24.[ローマ人の物語 11 -ユリウス・カエサル ルビコン以後〔上〕-/塩野七生]
25.[ローマ人の物語 12 -ユリウス・カエサル ルビコン以後〔中〕-/塩野七生]
26.[ローマ人の物語 13 -ユリウス・カエサル ルビコン以後〔下〕-/塩野七生]
27.[禅、シンプル生活のすすめ/枡野俊明](再読)
28.[ヤクザ式ビジネスの「かけひき」で絶対に負けない技術/向谷匡史](再読)
29.[ヤクザに学ぶ圧倒的交渉術/山平重樹](再読)
30.[杯/沢木耕太郎]
31.[ヤクザに学ぶ決断力/山平重樹](再読)
32.[男が人生で捨てていいもの いけないもの/川北義則](再読)
33.[絢爛たる醜聞 岸信介伝/工藤美代子]
34.[裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークXIII/石田衣良]
35.[深夜特急5-トルコ・ギリシャ・地中海/沢木耕太郎]
36.[旅する力: 深夜特急ノート/沢木耕太郎]
37.[反日種族主義/李栄薫]
38.[死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発/門田隆将]
39.[盟約(上)/C・W・ニコル]
40.[盟約(下)/C・W・ニコル]
41.[1ポンドの悲しみ/石田衣良]
42.[波のうえの魔術師/石田衣良](再読)
43.[神様からひと言/荻原浩](再読)
44.[幻想郵便局/堀川アサコ]
45.[いつか陽のあたる場所で/乃南アサ]
46.[夏の庭 The Friends/湯本香樹実]
47.[経済で読み解く日本史⑥ 平成時代/上念司]
48.[旅のラゴス/筒井康隆]
49.[幸せのかたち(立場茶屋おりき)/今井絵美子]
50.[マンチュリアン・リポート/浅田次郎]
51.[しのぶ梅(着物始末暦)/中島要]
52.[沙高樓綺譚/浅田次郎]
53.[ハッピー・リタイアメント/浅田次郎]
54.[真昼の花/角田光代]
55.[金持ち父さんの予言: 嵐の時代を乗り切るための方舟の造り方/シャロンレクター&ロバート・キヨサキ]
56.[金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法/ロバート・キヨサキ&シャロン・レクター]
57.[あなたに金持ちになってほしい/ドナルド・トランプ&ロバート・キヨサキ]
58.[ジヴェルニーの食卓/原田マハ]


(№109. 「おうち時間」の過ごし方(ふたつのデビュー) おわり)


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