№60. プチ逃避人生への誘い


今日(2009年3月29日)で、マレーシアに来てちょうど10年になる。考えてみれば、私の今までの人生の20%は、ここで暮らしたことになる。 住み慣れた東京から、KLに移って来た当初は、言葉の壁や、生活習慣の違いもあり、思ったことがなかなか出来ず、何かと歯痒い思いをしたが、 今では、ここが自分の故郷ではないかと勘違いするほど馴染んでしまった。 最初は気になってしかたがなかった東南アジア人のザツな部分(無神経さ)や、あまり衛生的とはいえないホーカーズ(屋台)も、慣れてしまった今では、 「なんで、あの頃は、そんなことが気になっていたのだろう?」と、いった具合だ。 明らかに自分の感性も相当変わったと思うが、この10年ほどでクアラ・ルンプール近郊の景色も劇的に変わった。 新空港KLIAが完成し、ツインタワーのあるKLCCなどの高層ビルがオープンし、高速道路も日々整備されつつある。 ショッピングモールやコンドミニアムなどは少々乱立気味で、日本食レストランに到っては、「こんなにイッパイあって商売になるの?」と心配になるほどだ。 そういう意味では、10年前の数倍は日本人が住み易い都市になってきているのではないだろうか。 そんな状況にプラスして、日本国内での閉塞感(年金の目減り、不況による精神的ダメージ、そして、若年犯罪などによる治安悪化、等々)も背中を押すのか、 数年前から多くの定年退職者達が日本からロングステイで来馬するケースが目立つようになった。 最近では、ロングステイの人達のなかの特定技術者には、一定の時間範囲で就労することもマレーシア政府が認めはじめていて、 今後更に“第二の人生はマレーシアで!”と、いった人達が増えそうな勢いである。 実は先日、そういったロングステイ移住予備軍の方から、この「アジア暮らし秘話」を、あるキッカケで読んだ、とメールを頂き、感想などを頂戴する機会に恵まれた。 おそらく、方法論としてではなく、間接的にロングステイの生活を思い描く一助になったのだろう。 そういうことであれば(そういうニーズがあるならば)、毎回、無責任な他人批判や、自己満足な駄文を垂れ流しているのをちょっとお休みして、 「マレーシアに移住を!」と、思い立ってしまった人達向けに、少しでも有益な情報(実例)を提供してみよう、と、思い立ってしまったのだ。 ただ、私が書けることは、まったく個人的な視点からの情報や、偏った経験からの感想ばかり。 在馬歴が長ければ情報も深い、といったこともないので、あくまでも、イチ個人が、自分の活動範囲で知り得た情報を書いているだけであることをご理解頂きたい。 そして、刻々と変化する(皮肉です)マレーシアのロングステイ希望者への規制や制度は、常に最新の情報を入手することが大切なので、その手間だけは絶対に惜しまないでほしいと思う。


それでは、自分が移住前に、気になっていた事柄を、項目別に分けて書いてみようと思う。
(マレーシア在住者の方には、ツマラナイ話題かも知れないが、“間違い探し”でもして、ミスがあれば教えてくださいな!)


【ビザ】
世界的な不況はマレーシアも例外でなく、自国の労働機会を守るために、外国人の労働ビザ取得に関しては、非常に厳しくなっている。 例外もあるが、現時点では「27歳以上で、月収RM5,000以上」でなければ、原則的には門前払いのようだ。 もし、この国で仕事をしながら(所得を得ながら)暮らしたい場合は、選択肢は、(日本)企業の駐在員、現地採用、もしくは投資して会社を設立することになる。 駐在員や現地採用の労働ビザ取得に関しては、前述のように、非常に厳しくなってはいるとは聞くが、採用する企業がマレーシアに対してどれだけ影響力があるかにもよると思われる。 GDPを左右するような超大手と、我社のような零細とを、一律で対応することはあり得ない。 しかし、そういった大手ほど、リーマンショック以降、給料や手当ての割高な日本人を極力減らしたいのが本音であろう。 “新型インフルエンザのリスク回避”という名目で、駐在員の家族全員に帰国命令を出した大手家電メーカなども、新たに現地赴任させる日本人は身軽な独身優先らしい。 一方、現地への投資は、マレーシア政府としては大歓迎の筈である。しかし、マレーシア人で出来る職務を、日本人に割り当てた場合は、労働ビザ発給を渋られる確立は大である。 ただ、私の場合のように、現地には投資者兼代表として日本人が1名、といったカタチで良いならば、後々活動制約があまりないので、リスクはあるが長期に暮らしたい人は一考に価する方法ではないかと思う。まあ、「定年後マレーシアで第二の人生を!」と考えておられる方々には、ロングステイ用のビザ(MM2H)があるので、ビザに関しては、このくらいにしておこう。 尚、MM2Hの情報に関しては、インターネットでもリサーチ可能だが、もし、現地下見旅行を計画されているのであれば、KL日本人会(The Japan Club of Kuala Lumpur)では、 週2回ほど業者による説明会を定期的にやっているので、参加すれば良いと思う。


【衣】
東京で暮らしていたときにも、気の利いた服を着ていたワケではないが、やはり季節毎に、それなりにおカネがかかっていたと思う。 四季の無い常夏のマレーシアに来てからは、会社も“ドレスコード無し”ということもあり、ほぼ毎日GパンとTシャツ(休日は短パン、サンダル)で過ごしている。 ユニクロが1,000円以下のジーンズを発表して話題になっているが、こちらでは、ちょっと探せば、その程度の値段は珍しくない。 Tシャツもワゴンセールで買えば500円以下だし、何よりも、東京のように小奇麗にしていなくても、誰も変な目で見ない。 私の場合は、「日本人らしく小奇麗で贅沢な服を来ていると、セキュリティ上好ましくないので!」という大義名分をイイワケにして、ほぼ毎日を“ご当地低価格ルック”でキメている。 マレーシアなどの南国は、気合を入れて被服費を節約したい人には、もってこいの場所だと思う。 ただ難点は、出張等でたまにワイシャツ&ネクタイ姿になると、首の皮が擦り切れてしまうことと、 必要に迫られて、新しい背広などを購入する際に、えらく高価に感じてしまい、決断力が鈍ることぐらいだろうか。


【食】
10年前に、マレーシアに移り住むことを友人に言ったとき、「マレーシアでは米が食えるのか?」とか、「食べ物は激辛のものばかりなんだろう?」と、的外れなことばかり言われた記憶がある。 日本におけるマレーシアの知名度は、現在でも、それほど高くはないが、流石に当地でロングステイを希望されている人達は、ガイドブック等で調査しているだろうから、こんなことは言わないだろう。 そして、現地の食べ物が、それなりに“口に合う”からこそ、ロングステイ先に選んだのだと思う。 もし、仮にローカルフードが嫌で、日本食しか受け付けない人がマレーシアで暮らすことになった場合でも、今のKLであればそれは可能だ。 伊勢丹やジャスコに行けば、ちょっと割高だけれど日本の食品、食材は当たり前のように売られているし、味は別として、寿司、鰻、焼き鳥などの惣菜も豊富にある。 日本食レストランもピンキリだが、先に書いたように、日本人居住区(モント・キアラ近辺、スバン地区)や繁華街(ブキッ・ビンタンやKLCC)には沢山ある。 ただ、なかには日本人の料理人が居ない“なんちゃって和食屋”もある。これらは、味、量、雰囲気、全て最低で料金だけ日本価格なんてところもあるので要注意だ。 もし、こういう店に入ってしまったならば、どこで飲んでも同じ味の筈のローカル産ビールをオーダーし、ムチャクチャな日本語で書かれたメニュー(傑作日本語が見つかる)を肴に飲むしかない。 まあ、日本食も良いが、せっかく、現地のインド系や中国系マレーシアンの作る“本場の味”が安く楽しめる地に居るのに、わざわざ割高でイマイチな日本食しか受け付けないのは、モッタイナイと同時に寂しい。 “慣れの問題”や“食わず嫌い”もあると思うので、とにかくトライすることが大切だ。 住み慣れた日本から、一大決心して海外に出てきたのだから、ホーカーズに飛び込み、食べられそうな料理を、身振り手振りでオーダーすることなんて、簡単なことだと思う。 因みに、ここ数年、私の休日の楽しみは、遅い朝に、貰い物の週刊誌や本を持参してホーカーズ(ローカルコーヒーショップ)で、ノンビリと朝食兼読書をすることだ。 “120円で買える至福のひととき”、我社のローカルマネージャーに言わすと、「それこそ、オールド・マレーシアンの習慣」だそうだ(むッ)。 (尚、現地の食べ物の種類に関しては、別コラム[No.4、No.38など参照のこと!)


【住】
KLに暮らす日本人の多くは、“コンドミニアム”と呼ばれるセキュリティガード付きの集合住宅に住んでいる。 ペットなどの事情で、一軒家を借りている友人も居るが、私も含めた、多くの日本人は、安全上の理由から現地人感覚では相当割高な 高級コンドミニアムを選ぶことになる。セキュリティーガードや、スイミングプールはもちろんのこと、サウナ付きスポーツジムやテニスコードを 備えたところも珍しくない。ちょっとしたマーケット風売店などをはじめ、日本人が多く住む地域のコンドミニアムなどは、住居棟の地階がレストランに なっていたりして、ちょっとしたホテルなどより豪華なところもある。 かく云う我が家は、そこまで高級ではないが、昔家族5人で暮らしていた、東京高円寺駅前のアパートの全面積が、リビングルームにすっぽり収まってしまう広さで、 家賃はその当時支払いっていた額と、ほぼ同じである。 さて、初めてKLで家を探すのはどうすれば良いだろうか。 人事異動で、同じ部屋を後任者に引き継いで行く大企業などと違い、ロングステイで初めてマレーシアに住む人は、なんらかのカタチで業者のお世話になる筈だ。 おそらく、ロングステイの手続きを請け負う業者(日本人経営の会社)が、現地の不動産斡旋業者と提携していて、ある程度の選択肢の中から、気に入った物件を選ばせる仕組みだろう。 もし、アナタが、ある程度の英会話が出来て、なるべく月々の家賃を抑えたいと思うなら、現地で評判の良い不動産斡旋業者を在住者に紹介してもらい、 月々の概算予算を伝えたうえで、色々な物件を見せてもらうと良いだろう。 現地の業者は、気に入った物件が見つかるまで、気長に付き合ってくれるし、契約前や、入居後の大家さんとの交渉もしてくれる。 我が家の場合は、現在の物件は3軒目だが、毎回リクエストする条件は、フル・ファニチャー(家具一式込み)&網戸追加が基本で、あとは部分的な再修繕や、家電製品の交換、などなど。 更新の際には、「更新のメンテは無しで良いので月々の家賃を安く!」等の条件を一応出してみることにしている。 こういった要求は、直接利害関係のある大家とやりとりするより、やはり、仲介(バッファ)を通してやったほうが気持ち的にも楽だし、後々シコリも残らないので、不動産業者の存在は貴重だ。 不動産屋への報酬は、大家から出ているので、直接仲介料を支払うこともなく、ちょっと日本人的感覚では、可哀想な気もするが、彼らも、日本人ネットワークで良い評判となれば、口コミで取引量も増える、ある意味“人気商売”なので、遠慮せずどんどんリクエストは出したほうが良い。


【車(ローン)】
KLでロングステイをするのであれば、便利な場所に住めば、車はなくても大丈夫だ。 メインの移動手段となるタクシーは安いし(初乗り60円弱)、電車やバスも一応は走っている。 ただ、突然の大雨や、道路が混む時間帯などで、タクシーに乗車拒否され続けると、車が無いことが大きなストレスになる。 しかし、車を持つにしても厄介なことも多い。 駐車場(コンドミニアムは駐車スペース付)や運転免許(現地で取得も簡単)は、あまり問題にならないだろうが、問題は車の価格である。 プロトン社やペルドゥア社といった国産車メーカーであっても、私は、けっして安いとは思えないが、日本人の乗りたい日本車は日本国内より相当割高で、若手ローカル社員達には、ある意味高嶺の花となっている。 今、私が通勤の為に使っているホンダCITY(日本名:フィットアリア?)でも、現金購入価格が購入時の為替レートで約2,400,000円であった。 そのローンを組む際も、「ローカル(マレーシア人)の保証人をつけろ」だの「会社の議事録を出せ」等々、簡単には行かなかった。 結果的には、『保証人になってくれる人なんて居ないし、スタッフに強要するのは嫌なので、車も要らないわ!』と、ゴネたら、銀行が「じゃ、保証人は要らない」と、何故だか折れてくれて丸く納まった。 やっと苦労して手に入れた車で公道にのり出すと、今度は、乱暴なドライバー達に手を焼くことになる。 タイやベトナムほど乱暴ではないが、“車線変更でウインカーを出さない”、“車間を安全な幅に保つと必ず割込んでくる”、とかは日常茶飯事なので事故も多い(バイクのマナーと事故の数は更に酷い)。 車検制度が無いのは嬉しいが、私が子供の頃に出た“ダットサン”などが路上でストップしてしまい、立ち往生していたりする。 こう見ると、ロングステイ者が車を持つか、持たないかは、とてもビミョーだ。まあ、おカネが沢山使える人は、車に関するサービス一切合財を日本語で対応できる業者に任せてしまえば良いだろう。 そうでなく、“老後を慎ましく”系の人達は、なるべく車を使わなくて良いコンドミニアム(タクシーやバスが使いやすいところ)を探すべきだと思う。


【英語生活】
海外駐在経験のある方は別格として、初めて海外でロングステイする人達が、一番心配なのは言葉の問題であろう。 マレーシアの場合は、マレー語、中国語(北京語、広東語、福建語、etc)、インドの言語(ヒンディー語、タミール語)と各民族別に、身内と会話するときの言葉は分かれているが、民族をまたいで会話する場合は、英語が事実上の共通語として使われている。 多くの日本人現地駐在員も、英語で業務をこなし、日々の暮らしで現地人と会話する場合も英語を使っている。 もちろんマレー語や広東語が出来ると、KLでは非常に便利であるが、極端に言えば、“英語だけ知ってれば良い”とも言える。 もっと極端に言えば、“中3レベル英語であっても、強気で自分の主張が出来れば、ここでは暮らしていける”と言い切ってしまいたい(ここで、うんうん、と頷いている在住者は多い筈!)。 まあ、それでは、英語で政治や経済を議論したりする“知的生活”には程遠いかも知れない。 が、まずは“中3レベル英語”と“度胸”を武器にマレーシア生活をスタートさせて、その後、現地の英語学校にでも通ってステップ・アップしていければ良いのではないかと思う。 だた、“落し穴”もある。「適当な英語でも暮らせるので、もうこれでいいや!」と、考えてしまっている人もけっこう多いのだ(自分の反省を込めて書いているのだけど・・・)。 何かとイージーに走ってしまうことが可能なマレーシアなので、外国で“知的生活”を実践したいと考える人は、[英会話]の心配などするよりも、 「どこに一線を引くか」、「せめて、このレベルは保たなければ」等々の、覚悟と、その実践方法(強制的に学校に行く環境にする等々)を明確にしておいたほうが後悔しないと思う。


【病院、保険】
ロングステイ世代には、病気への対応は重大な関心事であろう。 『万一の場合を考えて、海外暮らしを諦めた』という人が居ても全然不思議ではない。 正直言うと、私も、「もし、交通事故で瀕死の状態になったらどうしよう?」とか「急病で重態になった場合は?」とか、考えると心細くなる。 しかし、あまりネガティブな考えばかりで、何もせずに一生が終わってしまうのも悔しい。 自分なりにセイフティーネットを張ったうえで、ポジティブに考えていければと思っている。 まあ、イラクで報道取材している人や、カンボジアで地雷撤去している人達からみれば、マレーシアは超安全地帯なのだから、と・・・。 皆ではないだろうが、KLの日本人現地駐在員、もしくはその家族が病気になった場合は、数箇所ある日本語を話す医師が居る病院に行くことが多い (具体的地域名でいえば、スバン、バングサ、アンパンなどの日本人が多く暮らしている地域だ)。 ローカル社員が風邪をひいて診察を受けるような“クリニック”と呼ばれる病院などと比べると、診察料も桁違いに高いが、日本語による安心感や 処方してくれる薬への信頼感(根拠はないけど)もあり、日本人は“日本人用の病院”に行くことが多い。 我が家では、ささやかなセイフティーネットとして、海外在住者用の包括的な保険に加入しているので、(上限はあるが)病院でかかった費用は、ほぼ全額後で返って来る。 以前、長男が指を怪我して(別コラムNo.45、No.48、No.49参照)皮膚移植までするハメになった際には、この保険に救われた。 ついでに、マレーシアの医療レベルの話だが、この国のVIPが最終的にはシンガポールで入院したりしているのを聞く限り、“超一流”とは言えない筈である。 急患でも、デポジットが支払われないと処置しない、とか、“地獄の沙汰もカネ次第”的なお話も良く聞くので、医療に対して、あまり、盲目的な信頼はおかない方がベターかもしれない。 複雑な手術や、幼児への投薬等々、微妙なオペレーションの場合は、「日本に帰る」という選択肢もあろうかと思うが、全て最後は自己判断になると思うので、そのへんは「覚悟を決めて来られたし!」である。 (まあ、日本に居ても、セカンドオピニオンとかあるから、あまり違わないかも知れないけど)


【日本人社会(日本人会、友達)】
「海外に来てまで日本人とは付き合いたくない!」と言う人、反対に、せっかく海外に来たのに、ベッタリ日本人とだけ付き合っている人。 前者は、私に関わって来ないのであろうから、どうでも良いが、後者はチト厄介だ。 まして、ロングステイ者のサークルのような小規模なところで、先輩風を吹かせているような人が居たとすると、私がロングステイ移住前であれば、ちょっと引いてしまうだろう。 話は飛ぶが、KLには、KL日本人会 (JCKL: The Japan Club of Kuala Lumpur)という団体があり、日系企業や個人の会員の会費で運営されている。 日本人会の建物には、事務所だけではなく、多目的のホールや教室、小規模なマーケット、美容院、旅行社、そして日本食レストランなども入っている。 スポーツや芸事の会員サークル活動も活発で、有志による日本語教室などは、我社のスタッフも参加させてもらっていて、とても役立っている。 ただ、数年前から、不況による会員減(収入減)への危機感からか、対策としてロングステイ奨励のような政策が打ち出され、ロングステイの会員が増えだした。 2009年の今では“KL老人会”などと揶揄されるほど、所謂“お年より”が増えたので、スポーツ系のサークル活動をしていた人などは、 「自分が楽しみたいけど、お年寄りのお相手ばかりで、ツマラナイので最近参加してない」などと、言う人も出てきているのが現状だ。 一方、私個人の話だが、一昨年(2007年)までは、現地の企業人との付き合いは殆どなかった。 が、あるキッカケ(別コラムNo.58参照)で、昨年(2008年)あたりからIT関連企業の人達とお付き合いがはじまりだした。 企業規模は違うが、おなじ日本人同士ということで、“友達のともだちは皆トモダチ”のロジックで異業種の人達とも交流が生まれ、机の名刺ケースにも現地企業の名刺が増えてきている。 殆ど商売には関係の無い繋がりの友人達なのだが、それを“意味の無い関係”と思うか、“有意義な関係”と感じるかは、自分の立ち位置次第だろう(因みに私は、こういう関係は重要だと考えている)。 ちょっと前に、日本の取引先企業出身者が、ロングステイ先としてのマレーシアに興味があるということで、KLを案内したのだが、案内ついでに合流した異業種の友人達との飲み会が、非常に印象に残っていると言っていた。 少なくとも、私の案内したロングステイ希望者は、「海外に来てまで日本人とは付き合いたくない!」とは言わないだろう。


【余暇】
私の趣味は、読書とギターを弾くことだ。 読書は乱読、ギター演奏は、お上品なクラシックギターではなく、ロックやブルースのバンドとして演奏するのが大好きだ。 読書やギターの為、というワケではないが、駐在員必修科目のゴルフもやらないし、怪しい夜の店の常連でもない。 実は、マレーシアに移る前は、読書やギター演奏は今ほど熱心にはしていなかった。 ただ、音楽を聴くことはずっと続けていたので、移住前に、漠然と「東南アジアの小国では、最新のCDなどは買えないだろうな」と、思っていた。 なので、40歳を目前にして「マレーシア移住の為に、この際、趣味は諦めよう!」と決心していたのだ。 ところが、来て見てビックリ。こちらでは、大きなタワーレコードはあるわ、紀伊国屋書店も最新刊を売っているし、高級ギターを扱う楽器屋もある、おまけに、日本人在住者達のバンドは活発に活動しているし、練習スタジオも激安・・・。 そんな事情で、現在は、日本に居た頃諸事情で封印していたバンド活動も再開し、念願のCD製作や、パブでのライブ等々、余暇はドップリ“晴演雨読”の日々を送っている。 このような“没頭できる趣味”は、システム設計や資金繰、そして、人間関係などで沸騰しそうな脳ミソを見事にクールダウンしてくれる。 面白いミステリィに時間を忘れて読み耽っていたり、スタジオで気の合う仲間達との演奏がツボにハマッタときなどは、「今日は何曜日だっけ?今何時だっけ?」と、完全リセット状態にしてくれるのだ。 今年、50歳を目前にして、この10年間の移住生活を振り返ると、“没頭できる趣味”がなかったら辛かっただろうな、と思う。 そして、この“没頭できる趣味”こそが、老後一番大切になってくるのだろうな、といった予感もしている。


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最近、「マレーシアでロングスティを!」と、思い立ってしまった人向けに、夢のような情報が氾濫しつつある。 しかし、何事も“百聞は一見にしかず”なので、ある程度情報収集をしたら、現地に来て“実物”を見て判断することが肝要ではないだろうか。 一度来て、夢から覚める場合もあるし、更に熱が上がる人もいるだろう。 もし、熱が上がってしまい、もっと具体的に、マレーシアでの暮らしに関する実践的な情報がほしい人は、 毎年発売される『ハローマレーシア』というムックが一番有益だと思うので、宣伝料はもらってないが、ここで名前だけでも紹介しておこう。 (10年前に、東京で悶々としながら、集めていた情報の数倍の[ How to ]が全部出てた・・・)

それでは、皆さん、良い移住計画を!


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(№60. プチ逃避人生への誘い おわり)

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