№1.Why Malaysia ?


「なぜ、マレーシアに移り住もうと思ったのですか?」マレーシアに会社を作り移住しようと決めてから何度この質問を受けたであろう。もし、これがニューヨーク、パリ、ハワイであれば皆何も聞かずに理由を推測し納得してくれるのだと思う。「ワールドビジネスの中心で活躍したい」、「ファッション、デザイン、料理を極めたい」、「温暖な気候で余生を過ごしたい」それぞれもっともらしい理由がすぐに頭に浮かんでくるからである。ところがマレーシアの場合は、ある人は「マレーシアってオランウータンがいるジャングルなんでしょ」とか、「お米は食べられるの?」とか、ひどい場合は「なんで好きこのんで砂漠に行くの?」なんて言う人もいる。極めてイメージが曖昧なのである。もちろん、一万人もの在住日本人がいるし、毎年かなりの数の旅行者も日本から来ているので「マレーシア大好き!」と言う人も結構いるとは思うが、大多数の日本人にとっては「名前はよく聞くがイメージが湧かない国」なのであろう。今回は「アジア暮らし秘話」の第一回目でもあるし、毎度尋ねられる冒頭の質問にその都度答えるのも億劫になって来たので「なぜ、マレーシアを選んだか」を書いてみようと思う。

ここにA4三枚の資料がある。以前私が書いた「マレーシア現地法人設立について」という計画書である。内容的には詳細を公表するには稚拙過ぎるので控えるが、これを書いた当時マレーシアに対してどんな印象や理想を抱いていたのかが分かるので抜粋してみよう。

~~~原文抜粋(一部分)~~~

【背景とメリット】
コスト面での競争力の強化
2000年対応問題の特需で潤うソフト業界だが、98年の末頃より受注量は減少傾向に転換すると思われる。業界各社とも作業量の確保と余剰人員への対応で値引による受注を余儀なくされるであろう。生産性の悪い企業(コスト高の組織)は数年間で経営危機に陥り、規模の大小に関わらず淘汰されることも否定できない。ソフト開発企業の主要なコストは人件費である。多少下がったとはいえ日本国内(特に東京)の人件費の高さは世界的にみて異常である。その分日本人が優秀かといえば必ずしもそうではない。海外に目を向ければ日本人より安いコストで優秀な人材を確保できる可能性は非常に高くなると思われる。マレーシアは教育水準も高くアジアでは珍しく日本を見習う政策(ルックイースト政策)を打ち出し先進国入りを目指すとともにマルチメディアスーパーコリドー(MSC)等の国家プロジェクトでIT産業を支援している。

グローバルスタンダードへの対応と企業の国際化
98年4月の金融ビッグバン開始以来国内外の大手金融機関の提携ばなしが多数報じられたが産業界も決して他人事ではない。ひとつの企業が国をまたがることが当たり前となった今システム開発も日本独自のやり方だけでは通用しなくなるであろう。今後顧客の現地法人とのやりとり等多言語への対応もシステム開発企業に求められることになる。マレーシアはシンガポールと並び英語、中国語(広東語、北京語)、タミール語(インド)、マレー語と全世界への言語的ハブとして機能できる多言語国家である。日本企業が多数進出している理由も言語的メリットの大きさからと言える。

国内景気の低迷と税負担の軽減
国家予算の数倍もの借金を抱えたまま問題を先送りしている我国は将来国民に税金という形でツケをまわしてくるであろう。事業所得および個人所得の増大が見込めない現在の景気と急速に高齢化する現状では年金、医療保険等の収支も悪化し破綻の方向へと向かっている。将来この国で生活するためには給料の7割を国に拠出しなければならないという資料もある。今、企業(または個人)が国を選別するときが来ている。マレーシアは法人税最高28%、所得税最高28%、そして、地方税にあたるものはない。また、ラブアン島というタックスヘブンも存在し税制は我国と比較して企業には相当有利である。人口構成も若年層が多く高齢化という言葉とは縁がない。

地震災害リスクへの対応
阪神大震災で壊滅的な打撃を被った神戸の記憶はもう過去のはなしで、防災関連商品販売会社が倒産してしまうくらい予知不可能な災害には無頓着な日本人である。一旦ことが起こると経済活動どころか家族の生命まで奪いかねない地震災害のリスクはデフレやインフレなどとは比較にならないほどの超リスクである。近い将来大地震の予兆がみえれば、地震リスクを嫌い東京マーケットから地震のないニューヨーク、香港、シンガポールへと資金が流出するのは必至である。マレーシアもシンガポール同様に地震の心配はなく今後情報インフラの整備が進めば国際ビジネスのハブとして注目されるであろう。

豊かな生活環境
熱帯雨林をくりぬいて都市を建設したような首都クアラルンプール(KL)の街は、高層ビルが林立するオフィス街と緑豊かなガーデンシティと混沌のチャイナタウンが共存するふところの深い街である。KLを囲む衛星都市群は外国人居住者の多い高級住宅地で治安も良く東京の居住環境からみると天国である。また、車を除き物価はとても安く4リンギット(約150円)もあればかなり満足な食事が出来る。一方地方に目を向ければペナン、ランカウイ等のリゾートビーチやボルネオ島のジャングル地帯など豊かな自然が満喫できる。

~~~原文抜粋 おわり~~~

当時の認識が曖昧であった為、金額やパーセンテージ等の数値が間違っているかも知れないが、簡単に言うと、【優秀な労働力が低コストで】、【いろいろな言語に対応出来】、【高齢化等の社会負担が低く】、【地震も無く安全で】、【生活費も安く豊な自然を満喫出来る】国がマレーシアなのである。二年以上たった今読み直してみても8割がた頷ける内容である。交通渋滞や医療面での不安が無いわけではないが、確かに実感として日本人にとって住みやすい国なのである。

冒頭の質問に対する答えは以上で充分だと私は思うのだが、納得してくれない人は多い。「しかし、それだけで家族5人スパッと日本の教育とか捨てて移住できるものなの?」というのが次に来る疑問のようだ、これに関しては私の娘も自分のHPで書いているようだが、日本のネガティブな部分とか人生観とか長くなるので、またいつかこのコーナーに書いてみたいと思う。


(№1.Why Malaysia ? おわり)

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